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Kバレエの「海賊」

 まず最初に、私はバレエについての専門的な知識はほとんどなく、熊川哲也のダンスを観たいというだけで観ているファンなので、これから書こうとしていることは、バレエについての専門的なレヴューではまったくないことをお断りしておきます。
 
 Kバレエカンパニーの「海賊」(熊川抜き)公演を観てきました。よくも悪くも、”熊川ありき”のKバレエですので、前回「白鳥」を観た時のように、熊川哲也にだけ注目してしまい、他の人のダンスの印象が薄くなってしまうというようなことはなくて、Kバレエのそれぞれのメンバーの踊りを前よりじっくり観ることはできました。熊川哲也に代わってアリの代役を踊った橋本直樹さんについては、ジャンプや回転などのテクニックは、確かなものを持っているダンサーだと思いましたが、感情表現の点―アリ役では、メドーラに憧れながらも、主人のコンラッドへの忠誠心や身分の違いから、叶わぬその想いをこころの中に秘めるというような―では、まだあまりこちらまではその感情が伝わってこなかったかなと思いました。そういう点では、熊川君のアリを観たかったなあと思います。橋本=アリは、もともとのアリの設定―コンラッドという主人に仕えているという感じはよく出ていたと思いますが、Kバレエの「海賊」は、熊川=アリを中心に作られているので、「海賊」はストーリーにそんなに魅力があるわけではないので、熊川哲也という中心が欠けるとやはり物足りない気がします。そんな中、私が一番気に入ったのは、2幕1場(洞窟)での、”鉄砲の踊り”と名付けられている海賊たちの踊りです。この男性舞踊が、観ていて楽しくなるようなダンスで、「海賊」らしさが一番出ていた部分だったのではないかと思いました。あとは、舞台美術・衣裳は堪能しました。最初の、航海図のような幕の向こうに並んで立っている海賊たちの姿が透けて見える演出や、海賊船の登場シーンは、船やバックの色や照明がはっとするくらいきれいでしたし、衣裳も、いつもながら繊細できれいでした。「白鳥」の時も思いましたけれど、女性のミディ丈のドレスが私はチュチュよりも好きだなと思います。あの舞台美術、衣裳、熊川演出を観るだけでも価値はあると思いますが、やはり本人の思い入れのあった熊川=アリを観れなかったのは残念でしたし、アリ役のあのジャンプや回転やひねりが膝にとってはかなりの負担で、怪我につながったのでは、なんて思ったりもしました。公演前のインタビューによると、これからやってみたい構想がいっぱいあるみたいですので、きっと元気にカムバックしてくれると思いますが、長く彼の踊り続ける姿を観たいと思っているファンとしては、自身のダンサー生命のことも考えて、演目や振り付けを考える時期なのでは、と思ったりしました。ジャンプの熊川だけでなく、類まれな表現力の方にも、もっと皆が注目してほしいなと思います。

 最後の最後のカーテンコールに監督、熊川哲也が出て来たときの、観客の割れんばかりの拍手と、待ちかねたというようなスタンディングオベーションに、皆の想いが表れていたと思います。出てきてお辞儀をするだけで観客を引きつけるあの力は天性のものだと思います。

 

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「名犬ラッシー」

 「名犬ラッシー」のDVDを子どもたちと観た。子どものみならず大人の観賞にも堪える作品だと思った。(私は、公爵役のピーター・オトゥール目当てで観てましたが。)観る前は興味なさそうにしていた次男も、閉じ込められても閉じ込められても脱走するラッシーの姿や、少年のラッシーへの想いに、すぐに物語に引き込まれて、映画を短く感じるくらい一気に最後まで観ていました。私も、「少年と犬」という組み合わせに、わかっていながら思わずホロリとしてしまいました。貴族という人種の傲慢さ―自分の娯楽のためには周囲の迷惑など一向にかえりみない、金を積めば何でも手に入れられるというような(オトゥールが演じているので、つい見逃してしまいそうになるのですが)そういう階級と一般人との格差、特に主人公の住んでいるヨークシャーの貧しさ―主人公の父親の働いている炭鉱が閉鎖になって仕事が無くなり、お金のために軍隊に入ることになる―など、物語の社会的背景は大人の観賞に堪えうるほどしっかり描かれていますし、ハリウッドの動物映画のようなCGの多用や、動物がしゃべりだすような騒々しさの無い落ち着いた、英国映画の良さにあふれていました。
 
 ピーターは、貴族階級のそういうどうしようもなさを演じるには、顔に品がありすぎなのですけど。彼を観られただけで満足と言えば満足でしたけど。

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「武士の一分」

 映画「武士の一分」をDVDで観た。(結局、映画館へは行かなかったのですが・・・。)
 感想を簡単に言うと、まあ、さすが山田洋次というか、キムタクの演技から、いつものキムタク調が殆ど感じられなかったのは、やはり監督の演出力だと思いました。いつも、彼主演のドラマとかを見るときに、彼の演じる主人公の”陰影の無さ=感情の平板さ”が気になるのだが、今回の新之丞役では、主人公の複雑な感情の変化を、抑えた演技でよく表現できていたと思う。その辺りは、主人公の境遇と盲人という設定のおかげかもしれませんが、(いつもはワンパターンの役柄ばかりを演じさせられているのだとも言えるのでしょうが、)なかなかよかったと思います。只、「たそがれ清兵衛」の真田広之と比較してしまうと、やはり、立ち居振る舞い、着物の着こなし、髷を付けた顔の表情(髷顔がいまひとつ似合わない)など、すべての面において、顔の小ささもあってか線が細過ぎて、武士としての存在感がいまひとつなのは否めないです。私の中で三部作に順位を付けると、「たそがれ清兵衛」>「武士の一分」>「隠し剣鬼の爪」となりますね。でもまあ、キムタク主演でなければ、こんな心配することなしに映画に没入できたとも言えますけど・・・。前二作同様リアルな殺陣もよかったですし、個人的には、新之丞と徳平のやりとりの中にあるほのぼのとしたユーモアが気に入りました。

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「硫黄島」と「星条旗」についての宮台真司氏のブログ

 去年の記事ですが、イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」と「父親たちの星条旗」について触れた宮台真司氏のブログ記事を見つけました。

 「日本のサブカルは今年もますます「痛み」や「悲劇」から遠ざかりました」

 と題された記事です。このタイトルにある日本のサブカルチャーについての考察についても、ほぼ共感しました。「死にオチ」に満ちているそれらの表現がちっとも「痛く」ないという指摘にもほぼ納得しました。

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