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「 硫黄島からの手紙 」

 イーストウッド監督作品、「硫黄島からの手紙」をDVDを借りてきて観た。一般の評価通りの名作だと思った。アカデミー賞を受賞してもおかしくない作品だと思った。何よりも、これを撮ったのがアメリカ人であるイーストウッド監督だということに脱帽する。日本人の立場と視点に立った、日本人から見ても違和感のない日本人が描かれている。栗林中将を演じた渡辺謙以外は全員オーディションで選ばれたそうだが、西郷役の二宮和也の醸しだす雰囲気や、実在した元オリンピック馬術競技金メダリスト、バロン西こと貴族出身の西竹一中佐を演じた伊原剛志などのキャスティングも素晴らしく、監督の見る目の確かさを感じた。偏見を排して真実を描こうとする真摯な態度は、作品のバックに流れるピアノやトランペットによる哀愁を帯びた、硫黄島の死者への鎮魂の曲のような音楽の選択にも現れていると思う。その静かな旋律によって象徴されるような制作者の姿勢が、これらの当時彼らの置かれていた過酷で絶望的な状況 ―海を埋め尽くす敵の艦隊、日本からの援軍はなし―に、私たちの目を向けさせる。そして、敵国の軍隊をここまで描けるアメリカの映画人の底力を感じる。残念なことに、もうすぐ公開される日本の戦争映画とは、タイトルや映画音楽のみとっても、大人と子どもほどの差を感じる。タイトルだけとっても、天と地ほどの差がある。自己陶酔のようなタイトルを付けては、”反戦の意志”も戦争の真実も悲惨も伝わってこない。なにかをごまかして糊塗しようとするときに、ひとは声高になるからだ。それは扇動者の態度で表現者の態度ではない。そういう意味で、この作品は名作であり、日本人が見るべき映画だと思う。

 二宮和也は、記者会見で「人間の部分をなくさないように、人間であり続けることを一番に考えました。」と発言している。この”集団ヒステリー的な感覚”から遠く離れた発言からは、彼の演じた役の本質を理解し、監督の制作姿勢にも通じるような彼の聡明な感性の豊かさを感じる。


 ※gooブログに関連記事を書きました。

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