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最近読んだ本~四十歳の少年浦島の国~

 最近、読んだ本を紹介します。
 
 「母性社会日本の病理」(河合隼雄/講談社+α文庫)
  
 「他人を見下す若者たち」(副題)「自分以外はバカ」の時代!(速水敏彦/講談社現代新書)です。

 どちらも再読だったのですが、最近ブログに書いたこととの関連で確認したいことがあったので、また読み返してみました。「母性社会日本の病理」は「野ブタ」の感想記事に書いた、日本における”父性の不足”の問題について、「他人を見下す若者たち」は「中原中也」の記事に書いた、「悲しみ」という感情の減少についてとの関連で再読しました。それで、興味深かった点を少しだけ紹介してみます。

 まず、「母性社会日本の病理」ですが、河合隼雄氏は日本の社会のことを、父性原理に基づく西洋の近代社会に対して、母性原理の強い国ではあるが、厳密にいえば、”母性原理を基礎に持った「永遠の少年(=いつまでも少年であって、成人になれない)」型の社会”である、と定義しています。そして、”日本人の自我における父性原理の弱さ”は、今後の国際交流の必要性からも問題となるであろうから、”われわれは父性原理の確立にもっと努力すべき”であると。(筆者は、西洋型のモデルをそのままよしとしているわけではなく、母性とのかかわりを失わない”第三の道”の模索を提唱しています。)
 そして、そのような日本人の「永遠の少年」的心性がもっともよく現われた日本的な昔話として、「浦島太郎」の物語が紹介されています。この部分はとても興味深いので、くわしくは同書を読んでいただきたいと思うのですが、簡単に紹介しますと、浦島太郎というのは”「母ひとり子ひとり」家族の四十歳の子ども”なのだそうで、父親がいないということは、”主人公がその男性性を確立すべきモデルを欠いていることを示している”のだそうで(当然独身である)、そのルックスは、今で言うところのなかなかのイケメンではあったが、どこか弱々しくて男性的な強さは感じられないのだそうで、まさに典型的な「永遠の少年」そのものであると言える。(現在の日本で好まれているジャニーズ風なルックスを思い浮かべるといいのではないだろうか。)そして、浦島のもともとの話では、四十歳になった浦島は、ある日釣りに出かけたが、魚はまったく釣れず、一匹の亀を釣って逃がしてやったところ(三回釣って三回逃がしたという話もある)、その亀が美しい女性に変身して彼にプロポーズすると、浦島は(よく考えもせずに)すぐにそれを受けて結婚し、(この結婚の部分は現在残っている話では完全に脱落してしまって、亀姫は亀と乙姫に分かれてしまっている)、彼女に付いてこの世ならぬ世界へ行き、そこで時の経つのも忘れて過ごしていたが、ふと故郷が恋しくなって帰りたくなり、またあまりよく考えもせず玉手箱をもらって帰って来るが、現実の世界では途方もない時間が(三百年経ったと述べられている話もある)経っていて、途方にくれた浦島は、「開けてはならない」と言われた玉手箱を開けて老人になる(一説にはそのまま死んでしまったという話もある)というみんなによく知られた結末を迎えるところは、今もむかしも変わらない。なぜ結婚のテーマが脱落してしまったのかについては、儒教の影響や仏教の報恩思想との関連が指摘されていると同時に、日本人が持つ女性像との関連が説明されています。つまり、もとの話では浦島は四十歳にして、はじめて相手に言われるままではありましたが母親以外の女性と出会って、結婚というステップにすすむのですが、現在残っている話においては、結婚のテーマが脱落してしまい、亀姫が亀(女性の肉体性の象徴)と乙姫(結婚の対象とは考えられない仙女のような女性)に分離してしまったということは、「日本人が男性と同一平面上に存在し、対等な愛の対象となる女性像を結実させることが非常に困難である」(316頁)ということを意味しています。ともかく、筆者によると、浦島は”あまりにも弱く”、行き当たりばったりで、”努力がなさすぎ”で、”乙姫というアニマ像(=すべての男性がその内部にもっている女性の永遠なイメージ、決定的な女性像―ユングによる、)との間に望ましい関係を確立”するのに必要な”持続的な意志力”を持ち合わせなかったため、「玉手箱」(=”禁止を守り抜く意志力”をためすためにわたされたと考えられる)を不用意に開けてしまい、皆さんご存知の悲劇的結末に至るのである。(ふ~疲れた。)だから、現在の日本で起こっているいろいろな精神病理的問題の背後には、日本人の持つ”母性社会における「永遠の少年」的心性”という背景が横たわっており、その面からの考察が必要とされる。われわれ日本人は、なぜ、「成熟した大人」になかなかなれないのか、父性原理の弱さから来る自我の弱さ(=ひ弱な永遠の少年浦島像に象徴されるような)は、日本人自身によって、もっと意識されて、克服されなければならないものに思われます。日本における、父性原理と母性原理のバランスの悪さは、男性にとっても、女性にとっても居心地のいい状態とは言えないから。

 まあ、自分達の居心地の悪さの原因を考える時に、自分たちのことを客観視する視点が大事だと思うし、ジャニーズの美少年たちを観て、私たちの日本的に限定された美意識と「永遠の少年」型社会(の孕む問題点)にまで思いを馳せるのも意味のあることじゃないかなと思います。「そんなのうざ~い!」とか言うのは、典型的な「永遠の少年」的(浦島的)発想ですよ。(この間、ハリー・ポッターの「アズカバンの囚人」が放送されていましたが、主演の子どもたちのインタビューを聞いて、十代の彼等、彼女達のインタビューが、とてもしっかりしていて哲学的だったのに感心させられました。)
 
 ※以前に書いた関連記事、

 ヨン様、韓流ドラマ考(ココログアップのお知らせ)
 
 「野ブタ」最大の謎~母親の不在について

 というわけで、「他人を見下す若者たち」については時間が無くなりましたので、次回に紹介する(予定)です。

 

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