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「野ブタ」最大の謎~母親の不在について

 「野ブタ」に描かれていた世界を観てきて、ずっと気になっていた、このドラマの世界の最大の謎について、少しだけ書いておきたい。少しだけと言うのは、私は心理学の専門家ではないので、私の解釈が心理学的に正しいかどうかわからないし、したがって、これから書く文章が、とりとめのない印象のみを書き連ねることになる可能性が大きいと思うからです。
 
 ドラマ(原作は読んでいなので)「野ブタ」の世界の最大の謎とは、ドラマの世界からの”徹底的な母親の排除(不在)”です。主人公の三人を見ても、かろうじて登場する修二の母は、仕事で海外を飛び回っていてほとんど家におらず、たまーに家に帰ってきた時も、ひたすら寝ている姿のみで、すぐにまた海外へ、というかなり異常とも言える母子関係に見えるし、裕福な実家を出てひとりで下宿している彰にしても、下宿に訪ねて来るのは父親のみで、母親はオイちゃんの昔話のなかに出て来たくらいで(セリフはなし)、野ブタにしても描かれるのは、母親の再婚相手の父との関係のみで、母親はまったく姿も見せない。豆腐屋のオイちゃんにしても独身みたいだし(オイちゃんの女性関係として、健康食品を売りつける旅館の女将というのがいるらしいが・・・)、このドラマは母親的なものを徹底して排除して造られている。それは何を意味するのか?と言うか、ドラマとは反対に、現実に不足がちなのは殆どの場合、”父性”のほうで、不在がちの父親の役割まで担わされている母親のあり余る母性の海に溺れてなかなか自立できないのが、日本の親子関係の問題点だったりするのだが、その現実とは反対に、ドラマでは彼らは強制的に母親からは切り離されて登場する。桐谷家の場合、母親はチリのブタのお守りを子どもたちに贈ったり、修二にメールしたりはしているし、子どもたちが母親のことを大事に思っている様子も描かれていたが、しかし、母親とのスキンシップは(特に小学生の弟に関しては)絶対的に不足しているし、そんな母親の代わりに、桐谷家で母親の役を担わされているのが修二だったりする。よって修二は料理も裁縫も得意で、最終回で、ひとりでこちらに残ったらという父親の言葉にも関わらず、家族と一緒に引っ越すことを決めたのも、小学生の弟のためという母親的な気遣いからだし、母親の不在と言う桐谷家の状況が、修二にそういう選択をさせて、彼の性格形成に大きな影響を与えている。ドラマの制作者の意図はわからないが、人からどう思われているかや、外見を必要以上に意識しすぎる(完全主義のセルフプロデュース)なんていうのは、あきらかに女性的な感性だと思うし・・・。(過剰過ぎることが問題なのだと思いますが。)
 
 面倒くさくなったので結論を言ってしまうと、現実の日本の社会では、不足しているのは圧倒的に父性のほうで、母性が過剰なバランスの悪い状態になっている。このドラマでも、最初に野ブタをいじめるバンドーのグループや、最後まで残った悪意の真犯人カスミなどのように、人間の負の側面を描くのに女子が選ばれているのも、母性と父性のバランスの悪い(母性の過剰から来る)日本の状況の問題点を反映していると思う。だから現実の母性の過剰を抑えて正常なバランスにするために、ドラマから徹底的に母親やそれに類するものが排除されているのだと思う。私は、母性の過剰というバランスの崩れは、イジメの原因にもなっていると思う。そんなこのドラマの中で、女性(母性)の肯定的な面を体現していたのが、教頭先生のキャサリンと野ブタだったが、野ブタはまだ成長途中だし、ドラマの母性の不足を一手に引き受けていたのが、キャサリンだった。そして、現実の父性の不足を補うように、ドラマでは父親との関わりのみが描かれている。そして、セルフプロデュースの泥沼でもがいている修二は、女性化した社会に適応しすぎて、却って生き苦しくなってしまったのだと思う。そんな修二の性格形成や行動パターンには、母親の不在による母親役の影響がやはりあるのではなかろうか。そんな修二にとって、バランスの取れた成長をしている彰と、母性のよい面を体現している野ブタとの出会いは、自分が正常なバランスを取り戻すための最高の出会いだったのだ。

 それにしても、修二と言い、弘人と言い、どうしてこういつも亀梨君は背負わされてしまうのだろうか。まあ、見ているほうは、面白いんですけど。

 

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