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映画「不夜城」

 実はかなりの金城君ファンでして、そう言えば、彼のことはブログではちょこっとしか書いてないなと思って(たぶん、チャン・イーモウ監督の映画「単騎、千里を走る。」についてのNHKスペシャルについて書いた記事(gooブログのほう)と、カーウァイ監督の「2046」について書いた記事中(ココログ)でちょこっと書いたかなという程度なので、もう、かな~り遅まきですが、私にとっては出世作のカーウァイ監督作品(邦題「恋する惑星」「天使の涙」)と、この「不夜城」が(未だに)彼の代表作だと思っているので少し書いてみます。

 「不夜城」は映画を観てから原作を読みました。映画を観たのも金城武を見たかったからで、原作についての知識はほとんどなく観たのですが、当時かなりはまりました。最初に映画を観たので、劉健一=金城武というイメージが出来上がっていて、原作を読んだときには、「ちょっと違うかな」という印象を持ったりしました。なんか原作の健一は饒舌すぎる気がして。

 本物の歌舞伎町がどんなところであるかについては、ほとんど知識がないのですが、この映画に描かれた新宿や歌舞伎町は、香港のスタッフによって撮影されたことで、その危険で猥雑なイメージとともに、ロケ部分では特に、無国籍で危険なある種の美さえ感じさせる魅力を漂わせている。まず、歌舞伎町の路地を歩く健一を長回しで撮影したモノクロのタイトルロール部分が、ひっそりした音楽ともどもよくて映画にひき込まれて行く。確固とした寄る辺のない主人公の境遇と、悲恋を予感させる。

 主人公のふたりについては、賛否あったけれど、私はふたりともなかなか頑張っていたと思う。金城君の日本語の滑舌の悪い部分がところどころあった点についてはご愛嬌ということで、動きはキレイ(特にアクションシーンの動きは嫌味なくシャープで美しい)だと思う。(金城武にはカーウァイ監督作以来”走る男”というイメージがあると思う。)そして、劉健一という台湾と日本の混血の青年を嘘くさくなく演じられる俳優が彼の他にいるとは思えない。この原作より”甘い”劉健一は、映画オリジナルの劉健一として、金城武本人の実在感を付与されて息づいている。そして、彼のセリフや仕草からは、日本人にはない父性を感じるのも魅力。特に低いあの声に。
 
 そして相手役の山本未来であるが、この難しい役をよくこなしていたと思う。華やかなヒロインを期待する向きには、降板した葉月里緒菜のほうがよかったのだろうが、金城武には山本未来のほうが合っていると思った。他に、この役がこなせそうな女優さんも思い浮かばないし、葉月里緒菜もできなかっただろうと思う。恋する女性の甘い媚びるような演技はうまかったし、服の着こなしは、さすがデザイナーの娘だけあってセンスがよかった。一番好きなシーンは、最初の登場シーン。音楽もチャイニーズテイストの哀感あふれる音で、なかなかよい。ボロボロのアパートで彼女の帰りをじっと待つ主人公、ドアが開いてまず足元が映り、それから灯りを点ける指先、後姿というカメラワークがよくて、また、ふたりの出会う場所としてのこのボロアパートが今時ちょっとないボロさで、そのこだわりによって映画の中でも私の好きなシーンです。

 そして、飯田橋にあるという設定のマンションでのシーンで、健一が電話をかけながら彼女の着替えるシーンを後ろから見つめるシーンがあるけれど、チャン・イーモウ監督の「ラヴァーズ」で彼がチャン・ツィイーの水浴する姿をのぞき見するシーンを観た時にこのシーンを思い出した。私はイーモウ監督は「不夜城」のこのシーンのことが念頭にあったような気がした。暗と明ではあったけれど、女性にひかれていく様子の表現として、どちらも印象に残っている。下品にならずに、さらっと演じられるのが金城君ならではですけど。

 あと、遠沢というルポライター役で田口トモロヲがサスガの達者な演技を見せていて、ぴりっと映画をひきしめていた。葉暁丹の手下役のでかい俳優さんと、ジローという元刑事の路上生活者役の俳優さんもぴったりだったし(すみません名前がわかりません)、健一を慕う役で、初々しい谷原章介も出てくるし、日本人の脇役陣はなかなかよかった。中国語を省いた鈴木清順には笑ってしまったけれど。只、椎名桔平は、ヘアスタイルを創りすぎていて違和感があった。声がでかいところはいいのですが、呉富春の手がつけられない凶暴さ単純さは彼からは感じられないし。

 中国側の俳優さんたちについては、よくわからないのですが、女優さんは、日本の女優さんに比べて華やかで、彼女たちと比べると、山本未来は服も化粧も日本的に地味ですけれど、それが、却ってヒロインとしての彼女(の異質性)を目だたさせている。
 
原作を読むと、健一が初めて見つけた"自分の分身のような夏美(=小蓮)"にこだわっていく心理が、映画よりくわしく描かれている。映画では、夏美に魅かれる健一の詳細な心理までは説明されていないが、ふたりの来歴や境遇から来る孤独は、映画からも充分に、いや、金城武の切ない瞳と、生き延びるために絶えずあがきながら動き続ける絶え間ないアクションによって、より、私たちに迫って来る。ふたりの孤独感ゆえにこの恋が余計に切なく、ラストの哀切さを増している。そして、人間の孤独という普遍的なものを描いたことに、この映画の存在価値があると思う。その成功の重要なポイントは、制作スタッフの細部へのこだわりと、金城武本人の持つ存在感だと思う。そのことが、演技にとっては日本語の滑舌などよりも大事なのだ。

 続編の「鎮魂歌ー不夜城Ⅱー」と完結編の「長恨歌」も読んだ。期待して読んだのだが、一作目のちょっとロマンティックな劉健一は、もうどこにも見あたらない。「Ⅱ」では最初と最後に小蓮亡きあとのその心理が語られるだけで(―感情移入できたのはこの部分だけだった)、本編では、別の主役ふたりによって、全ての事件の黒幕の悪鬼のような劉健一のことが語られるのがほとんどだし(最後にある一線を越えてしまった存在として現れるが)、物語はさらに陰惨を極めているし、主役のふたりにも、その恋にも感情移入できないし、「長恨歌」では、小蓮の存在も消えてしまって、さらに幽鬼のようなモンスターのような存在となってしまった健一に、私たちはもうなすすべもないと言った感じでお手上げなのだ。(この巻に馳星周は劉健一の代わりに武基裕という主役を登場させてはいるのだが、)本当に、この原作をどうやって映画化するのだという感じで、続編を予感させる映画のラストに、映画「不夜城Ⅱ」あるいは「不夜城完結編」を期待していた私たちの期待はどうしてくれるのだと言いたくなる。このままでは映画化は無理そうだし、金城武は、インタビューで確か「人を殺したり、傷つけたりする役はあまりやりたくない」と言っていたのもあるし・・・。「Ⅱ」の原作では「小蓮との約束を果たすために」という独白が冒頭に出てくるのだが、映画の「小蓮との約束」はこれからも果たされそうにない。(ネタバレです)完結編は、あっけなく楊偉民は殺されてしまって、あとは、幽鬼劉健一を武基裕によって葬らせるための物語とも言えるが、「不夜城」の劉健一と同類であるはずの武基裕の恋があまり、こちらに迫ってこないのはどうしてだろうか。「映像で小蓮と健一の物語が完結するのを見たい。」と思うのは私だけだろうか。でも映画の「不夜城」は原作の「Ⅱ」と完結編には素直にはつながっていかない。というか健一の小蓮への思いはどこへ行ってしまったのだろうか。小説「長恨歌」のどこにもそれは見当たらないし、こちらの感情移入をまったく拒否する人物に、私たちは興味と関心を抱き続けられるものだろうかという疑問が、このふたつの続編を読んでわいて来ました。俗っぽいものは書きたくないという意図なのかもしれないけれど・・・。

 映画「不夜城」の脚本に、監督李志毅とともに、今は亡き野沢尚氏が名前を連ねていました。

 あと、映画で好きだったシーンをひとつだけ付け加えておきます。崔虎の束縛から開放されたふたりをぐるぐる回転するカメラワークで撮影したシーンです。それぞれ相手への切ない思いがあふれているようなふたりの表情がよく、そのあとに続くB’zの挿入歌へとつながる映像もなかなかよかった。

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Tracked on November 06, 2006 at 07:48 PM

» 不夜城 [1-kakaku.com]
馳星周の原作で、金城武、山本未来主演による映画『不夜城』のサウンドトラックである。音楽は音楽監督だけに留まらず、映画監督、舞台演出家としても活躍する梅林茂が担当している。 特徴的なのは、曲の冒頭に劇中のセリフがそのまま録音されているトラックがあるところであろう。すでに作品を見た者にとっては、ニヤリとさせられる手法ではないだろうか? ほかにもブルージーなB’zのや、レオン・ダニエルズによるナット・キング・コールのカヴァーなどの歌物も収録されている。(末延仁人)... [Read More]

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