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「アブダラと空飛ぶ絨毯」

 年末年始に読んだ本、あの「魔法使いハウルと火の悪魔」の姉妹篇 「空中の城2 アブダラと空飛ぶ絨毯」 (ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作/西村醇子訳/徳間書店) を紹介します。

 作者は、あの”空飛ぶ絨毯”が出て来る本を書きたくて、この物語を書きはじめたそうです。そして「ハウルと仲間たちの、その後の様子も気になっていた」ので、彼らを、この物語にも登場させています。ハウルやソフィー、カルシファーは、三人ともそれとはわからない姿に変えられて登場しますので、「ハウル」を読んだひとは、あれっ、彼らは何処だ?と思われるでしょうが、作者のジョーンズさんはちゃんと彼らをこの物語に登場させています。「ハウル」を読まれたかたには、彼らがどのような形でこの物語に登場するのかを見つけるという楽しみもあると思います。もちろんあのハウルの城も出てきます。姿を変えられて。

 主人公は、ラシュプート国ザンジブ市のバザールの絨毯商人アブダラです。彼は、金持ちでも英雄的でもない、空想好きで気の弱い青年です。その彼が、偶然手に入れた空飛ぶ絨毯に導かれて行った庭園で、<夜咲花>という姫ぎみに出会って、恋に落ちますが、ある日のこと、彼女は庭に舞い降りた魔神(ジン)によってどこかへ連れ去られてしまいます。それから、アブダラの、空飛ぶ絨毯や”瓶の精霊”ジンニーに助けられた、<夜咲花>を捜す旅が始まります。途中で、ジンニーの助言によって、ずるがしこそうな顔をした、いわくありげな兵士といっしょに旅をすることになります。そして瓶の精霊ジンニーは、一日にひとつ持ち主の願いをかなえてくれるのですが、かなり気むずかしくて、「災いを引き起こすような形でしか願いをかなえない」のです。果たして、この兵士は何ものなのか、そしてアブダラは<夜咲花>を見つけ出すことができるのか、ハウルやソフィーはどこにいるのか。物語の後半は、「ハウル」の舞台インガリー国(オキンスタン国)に移って展開します。結末を知りたいかた、またハウルたちに会いたいかたはぜひ読んでみてください。

 それにしても、前作のソフィーもそうでしたが、この作品に出て来る女性たちも、<夜咲花>をはじめとして、皆、運命に立ち向かおうとする聡明で力強い女性(本編に出て来るソフィーのことを、アブダラが「気が強い」と評しています)に描かれています。それに比べて、前作のハウルもそうでしたが、この作品のアブダラも決して英雄的人物には描かれてはいません。そんな彼らが、愛するもののために勇気を出して、危険を冒して、運命に立ち向かっていきます。前作でも本作でも、それがテーマだと思いますが、「ハウル」を読んだものとしては、ソフィーとハウルのその後を知ることができたのがうれしかったかなと思いました。


 ソフィーとハウルは、あいかわらず空中の城でくらしました。ときどき喧嘩はしていましたが、その方が二人は幸せなんだと言われています。                ( 「アブダラと空飛ぶ絨毯」より ) 

アブダラと空飛ぶ絨毯
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作 / 西村 醇子訳
徳間書店 (2001.9)
通常24時間以内に発送します。

 

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