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熊川哲也さんのこと

 先日、念願だった熊川哲也さん率いるKバレエ カンパニーの舞台(『白鳥の湖』)を観ることができた。元々、ダンス全般観るのは好きなのですが、地方に住んでいると中々こういう本格的な古典全幕バレエを観る機会は無いので、そんなにいい席は取れなかったのですが、堪能させてもらいました。舞台美術や衣裳も素晴らしくて、芸術監督熊川哲也の鋭く繊細な美意識が細部にまで感じられました。勿論、熊川さんのダンスはスペシャルでした。カーテンコールでは、観客殆ど総立ちのスタンディングオベーションに何度も何度も答えている姿が印象的でした。観客のその反応は、お世辞や形式的なものではなく心からの感動の表現として自然に出てきたものでした。
 
 私が熊川哲也の名前を初めて知ったのは、彼がゴールド・メダルを受賞した’89ローザンヌ国際バレエ・コンクールがNHKの教育テレビで放映されたのを偶然見た時です。私がその番組を観ていたのは、その番組の解説をしていた、名前は忘れましたが、たぶんその世界では有名なフランス人の女性の解説者の毒舌ぶりがおもしろかったためで、さすがフランス人とある意味感心しながら、彼女の解説を聞きたくて、その長い番組を最後まで観てしまったのです。コンクールを観たことのある方ならご存知と思いますが、コンクールはクラシックの部門と創作ダンスの部門に分かれていて、クラシックの部門は、そこそこ彼女に誉められるひともいたのですが、創作ダンスの部門では、それこそ彼女の毒舌が冴えわたって、「これはひどいですね」 「全然だめですね」 「創作ダンスというものが全然わかっていませんね」 などというコメントが続いて、殆どのひとがばっさばっさと切られていったのですが、その彼女が、最後に熊川さんが登場する前に、「皆さん、彼のダンスを観てください。創作ダンスとはこういうものです。」みたいなことを言ったのです。私は彼女のそのコメントにびっくりして、そして熊川さんの創作ダンスを見て、ーピエロの扮装でのダンスでしたが―その大胆かつ豊かな表現力に感動したのです。たぶん、その時17歳くらいだったと思います。フィギュアスケートの伊藤みどりなどを見てもテクニックはあっても表現力はいまひとつというのが日本人のイメージだったので、その時の彼のダンスには本当にびっくりしました。今でも時々、そのコンクールの様子がビデオで紹介されたりするんですが、大体クラシックダンスのほうが使われていて、私が感動した創作ダンスのほうは観る機会が無いのが残念なんですが、今でもその時の鮮烈なイメージが頭の中に残っています。こんな日本人が出て来たんだという感慨とともに。その後の、活躍ぶりは、皆さんもご存知のとおりですが、偶然とは言え、あのコンクールで熊川哲也というバレエ界のスターが誕生した瞬間を目撃したことは、私の中で、密かに自慢すべきこととなっています。同じ時代に生きていてよかったと思うような芸術家のひとりです。そして、あの日本人離れした表現力がどうやって身に付いたのかその秘密を知りたい気がします。

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Comments

azamiさん、私も全く同じ番組を観ていました。「凄い子がでてきたな~・・」というのが感想です。そして、バリシニコフを思い出していました。その後、「F」という映画の熊川さんにもバリシニコフのあのスター性と共通するものを感じています。もうお一人、日本の男性ダンサーで首藤さん(たしかこういうお名前だったと思います)がいますが、彼には亡くなったジョルジュ・ドンを思わせる雰囲気を感じています。
二つの素晴らしい個性あるダンサーが、今活躍していることに、とても感激しています。
ところで、地方公演ってどうしてあんなに急ぎ足なんでしょう・・・。せめて数日滞在してくれたら、複数プログラムも見られるのに・・。
コレばかりは、東京にかなわないですね。

Posted by: rolferK | October 06, 2005 02:17 AM

いらっしゃいませ、rolferkさん。すっかり更新をさぼっているこちらのブログにいつもコメントいただいてありがとうございます。
あの頃の熊川君のインタビューの、茶目っ気と自信たっぷりの悪がきぶりが微笑ましかったです。映画「F」は私も観ました。その後で主演した「お葉」も観ましたが、竹久夢二役はちょっと筋肉質すぎて違和感がありましたね。地方在住のハンデは仕方ないけど、やってるのに観にいけなくてやきもきするよりはいいのかなと思うようにしています。今度はクラシックじゃなくてモダンなものを観たいです。

Posted by: azami | October 06, 2005 04:52 PM

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