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ドラマ「天城越え」の松本清張

 ちょっと前に、松本清張原作のテレビドラマ「天城越え」が再放送されて、(NHKアーカイブスで放送された大谷直子主演のもの)何となく見ていたのだが、そのドラマに松本清張本人が俳優として出演していたのである。ストーリーは大体わかっていたし、田中裕子主演の映画も見たことがあったので、そんなに熱心に見ていたわけではなかったのですが、俳優松本清張の登場には思わず惹きこまれてしまった。
 その出演を本人が希望したのか、それとも演出家(和田勉)が頼んだのかは知らないが、このドラマのテーマの表現に欠かせないような、重要な役だった。ストーリーについてはよく知られていると思うので、省略させてもらいますが、松本清張の役は、同じ時刻に天城越えをした娼婦へのほのかな思慕から、少年の起こしてしまった殺人を目撃する旅の遍路のような役だった。殺人を犯してしまって放心状態の少年を岩の上のほうからじっと見つめて、「ぼうやのために祈ってあげたよ。」と言って、手を合わせて祈り、そのまま立ち去るという役だった。松本清張というひとは、容貌にも迫力があったので、彼が現われた場面は、今思い出しても、まるで神様か仏様があらわれたかのような、静かではあるが圧倒的な存在感があった。この少年役は鶴見辰吾だったみたいだが、そして、宇野重吉という名優も出ていたのだが、俳優松本清張の印象が強烈で、あまり覚えていない。
 
 ドラマや映画は説明するとつまらなくなるので、あまり説明したくないし、うまく説明もできないのですが、松本清張の役は、誰も見ていないと思っていても、神様は見ている、あるいは自分の心が知っているという昔からの教えを思い起こさせる。個人のなかにある良心が形として現われて(それを神と言うのかもしれないが)なおかつ、その罪のために祈ってくれる。そういう存在を自分のなかに持っているということが、そしてその目を意識しているということが、生きていくうえで重要なことなんじゃないかとちょっと思いました。

 この作品はNHKよりDVDとして出ているみたいなので、興味のあるかたは御覧になってみてください。松本清張を見るためにだけでも見る価値はあると思います。

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Comments

今晩はそれは知らなかったですね。
昔見た記憶があります。もちろん映画版も砂の器と二本立てで。映画方のインパクトが強くてTV版はそれほど・・・砂の器より人間の内面の描きかたが良かったです。
個人的にはアガサ・クリスティが好きですけど。蛇足ついでに昨日、県内の美術館で「オランダの光」という映画の上映をしていて十七世紀の画家に自然光の影響をいかに受けていたかを検証するドキュメントでしたがおもしろかったです。

Posted by: かきみっくす | May 16, 2005 at 08:01 PM

かきみっくすさん、コメントありがとうございます。TV版の「天城越え」は、映画版のようなセンセーショナルな部分は無くて、全体に抑制された表現だったので、少年の心理が余計に浮き彫りになって来るような感じを受けました。私は何よりも、人間松本清張の存在感に圧倒されました。
 「オランダの光」という映画の、十七世紀のオランダの画家というと、ルーベンスやレンブラント、フェルメールといった画家達でしょうか。北ヨーロッパの淡い階調の光で描かれた絵画ですよね。

Posted by: azami | May 16, 2005 at 11:19 PM

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